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高齢化と認知症について 第3章:精神と認知症について

物忘れ、失見当(見当識が失われる)などが現れると、すぐに認知症が疑われますが、認知症にも2種類があります。次の二つのことを分けてください。

「認知症」と「仮性認知症(うつ病や、せん妄(意識の朦朧や興奮)、孤独感からの不安)」の違いです。

 

認知症は脳の器質的変化で、血管の圧迫死(アルツハイマー病)や動脈硬化による血流の不全(脳梗塞)から脳の一部が壊死する病気です。病気ですから本人に自覚はなく、むしろ、物忘れを隠そうとしたり、自分でも不自然なことが起こる(物忘れのために)ため、邪推し、妄想化するなどの症状がみられます。本人は「忘れること自体がわからない」のです。病気として自然に進行します。

 

仮性認知症は違います。孤独感の不安や寂しさからの感情の興奮がみられ、不眠や夜間せん妄などの症状として現れます。強い孤独感は理性を麻痺させます。

麻痺して、生きていることがわからなくなり、症状に波はありますが、突然せん妄状態(意識の朦朧や興奮)などで発症します。隣人に頻回の電話をかけるなど、迷惑行為、騒がしさが目立ちます。こうした場合は一人暮らしの例がほとんどです。基本は、寂しさからの孤独感と、二次的錯乱です。意識の障害による朦朧ですから、物忘れや失見当なども目立ちます。心理検査の点数も当然悪いです。

周囲からは当然のごとく認知症の発症と判断されます。

しかし、その後救済策として、施設やデイサービスに入所などの対策をすると、1週間から半月で症状が改善します。普通の状態に戻ります。

 

本物の認知症は不可逆的変化で、基本的に症状そのものが改善することはありません(安心して和らぐことはありますが)。

入所したり、コミュニケーションの回復などで症状が改善するのは、本物の認知症ではなかったからです。これが仮性認知症の特徴です。

仮性認知症の人は、身体は老化し、友人も減り、将来への不安は強まります。ただ精神は老化しないので、結果的に孤独感や不安感は強まります。皮肉にも身体と同じように精神も老化するのであれば、判断力も落ちて、それほど錯乱するような実存的不安は感じないでしょう。

真正の認知症と仮性の認知症を分けるのに参考になるのは、一人暮らしか、家族との同居かなどの環境の特徴です。一人暮らしで発症した場合、ほぼ仮性認知症と思われます。家族がいても認知症の症状が出るときには、真正の認知症であるとおおまかな検討をつけていいと思います。

ただし、夫を亡くした、など心のよりどころを失うと、家族がいても仮性認知がみられます。孤独感が増していくからです。

 

治療の問題に移りましょう。

認知症の人の世界は、物忘れから来る世界の変化への不安と恐怖です。

物忘れとは、突然物がなくなったり、時に不思議な場所から物が出てきたりすることです。失見当とは場所や時間がわからなくなることです。精神の迷いの世界です。また尿失禁など恥ずかしいいことが起こります。尿失禁では本人は恥ずかしいから汚物を隠そうとします。それでかえって問題がこじれます。他人には嫌がらせに映るからです。

 

認知症の人はすべて何もわからないのでしょうか。わかることがあります。周囲の人間の怒りや優しさなどの感情です。赤ちゃんの感じる世界といっていいでしょう。

よく年をとり、赤いちゃんちゃんこなどを着て微笑んでいる老人がいます。

アルツハイマーの認知症は途中は症状が大変ですが、さらに進むと精神も退化して、赤ちゃんのごとく穏やかに生活していけます。

古来からの憧れの老人像とは、アルツハイマーの末期の老人の姿かもしれません。

自然な死を迎える生物の知恵なのでしょうか。

 

症状の悪い、中間の認知症の人の治療についてですが、恥の意識や不安の軽減が最大の治療の目標です。

尿失禁などをしても怒らないことです。さりげなく笑顔で接することです。

そうすることで、本人は恥ずかしくない、大丈夫なんだ、隠す必要がないんだ、と感じ安心します。

対応は確かに難しいですが、何か失敗しても、赤ちゃんの失敗に接するように暖かく接することです。

その感情は良いメッセージとして認知症の人にも伝わるのです。

 

総じて、認知症も含めた老化の防止に特効薬はありませんが、リハビリとしては精神機能、身体機能を使うことです。

特に他人との会話は、脳、耳、目、判断力、表情、心の躍動など様々な活動を伴い、脳の活性化に役立ちます。積極的にリハビリとして活用すべきです。笑える会話が特にいいようです。

同じように、ゲームでも小さな賭け事などにすると、感情が熱くなり、脳が活性化します。

 

このように考えてくると、我々の精神の老化はあまり進まないことを念頭に、何が正解かわかりませんが、将来、老化の苦悩は発生するものであり、日ごろから未来の死に対して考えたり、体が元気なうちにできる終活の準備は、早めに進めることが必要なようです。

 

 

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