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不眠症の問題について

不眠をめぐる問題について考えてみましょう。

 

不眠の苦しさは不眠の人にしかわかりません。十分自然に眠れる方は、たぶん、幸せな方なのです。その場合、体質的に眠れる習慣があるから、不眠の苦しさやこわさを理解できないのだと思います。眠れる人は「気軽に薬を使うな」とか「気持ち次第だ」などと、とくとくと語るようです。それにより、不眠のため薬を使われる方などは、自分が責められているようで、ずいぶん肩身が狭くなります。

 

不眠は、疲労によって、臓器としての脳の活動を低下させます。活動が低下すると、脳から発せられる理性の活動も低下し、ネガティブな思考しか生まれません。不眠などの脳の活動を低下させる要因を排除できれば、余裕のあるポジティブな理性の活動が生まれます。

 

「薬を使うとやめられなくなるのではないか」と心配する方も多いですが、そうした強い心配を持つ方は、逆にほぼ確実に薬をやめられます。皮肉ですが、「心配のために薬を飲んだ不安」で神経が昂り眠れなくなるので、薬を飲まないほうが安心して眠れるようになるのです。

薬よりも意志のほうが強いと思っていいと思います。

 

不眠症になる方の多くは、昔からの過剰な努力や短時間睡眠で長時間の労働の方、また、考えすぎる方に多いです。

睡眠は飛行機の着陸と同じで、覚醒度が下がることで着陸、睡眠に入ります。

無理な労働などで、眠気と戦って睡眠を覚醒させる習慣をつけてしまうと、眠気と戦ってしまい着陸できず、かえって覚醒してしまいます。寝るときに眠気を覚まそうとする逆の意識が自然に働き、眠れないようです。時に不安性障害に似た、睡眠恐怖症と呼ぶべき状態になる方もいます。

 

不眠の夜は長いです。さまざまにいやなことばかりが浮かんできます。脳の働きが疲れてネガティブになるからです。不眠の夜は長く、しかも翌日も寝不足で頭が十分に働きません。

ボーッとして集中できません。通常は睡眠により疲労を回復して、細胞をリフレッシュしていくのですが、それができません。眠れぬ日には時間が経つのも早いです。何も進まないのに時間が経っていきます。

また、当然、心配事があると眠れなくなります。通常はぐっすり眠れる方でも、何か不安の種が重なると、当然神経が昂り、眠れなくなり、眠れない恐怖に苦しめられます。

老人の方の不眠は、時に興奮を伴うせん妄や意識の朦朧状態をきたします。

 

寝るための方法にいろいろ提案されているようですが、あまり効果のある方法は少ないといえます。

ただ、寝る30分以上前から、作業などをやめて、ゆったりと神経活動を減らし、飛行機の着陸のように少しずつ神経を休め、「寝る体制づくり」をすることは役に立つようです。また、冬眠と同じように、早めにお風呂に入り、睡眠時の体温が低下している状態のほうが寝やすいようです。

さらに、運動や労働も、運動ニューロンの活動によるその筋肉疲労がうまく神経を休めさせてくれると、ゆっくり眠れます。しかし、無理な労働や運動で神経を高ぶらせて活動すると、逆に神経が覚醒し、体は疲れているけれども眠れなくなります。このタイプの不眠の方も過剰労働の方に多いようです。

 

「眠りの薬を使うと早くボケる」と批判する意見の方も多いですが、実際には、不眠はアルツハイマー型認知症の発症を5倍近く多くします。夜間の睡眠が、アルツハイマーの原因物質であるたんぱく質の排出に必要だからです。また、不眠による臓器の疲弊度を考えると不眠は万病のもとであり、良眠は長生きの基本になります。薬としては鎮痛剤などのほうが体にはるかに悪いと思います。

不眠で薬が多くなり、ボーッとする方はいますが、認知症を発症しているわけではありません。

それは薬の量や種類の調整の問題です。早く調整してもらうことが大事です。

確かに外来でも頑固な不眠の方が多くいらっしゃいます。通常の薬の量では眠れないのです。

睡眠をとるために量や種類も多くなります。眠るためには仕方がないことだと思います。

ただ、睡眠薬などは昔と比べてずいぶん改良され、安全性も増し、睡眠のホルモン利用したりするタイプもあります。特に特殊な作用の薬ではありませんし、睡眠薬には認知症を発症させるほどの力も作用もありません。薬としての作用が違うだけで、通常の内科薬と同じです。また、薬があるだけで安心できるという心理効果もあります。

 

通院していて不眠症を併発している方は数多くいらっしゃいます。

逆に不眠、興奮を伴わない精神疾患は「ない」と断言してもよいと思います。

心配事や悩み、不安、パニック障害、うつ病、心的外傷、家族の死や離別などのストレス疾患のすべてで、不眠を伴います。生きていくことの裏側といえます。

さまざまな神経の働きは、それぞれ亢進して高ぶるか、ダウンするかの二種類しかありません。精神疾患では、基本的にすべて神経が高ぶる方向の反応が出ます。高ぶると不眠が生じます。強い不眠症の方の不眠の薬の多くは、睡眠薬ではなく、神経を鎮静するための精神薬や抗うつ剤の併用です。確かに病的に不眠の方がいて、かなり神経を鎮めないと眠れない方もいます。

 

病気で神経の活動がダウンするのはうつ病だけです。しかし、うつ病でも不安や悩みで二次的に他の神経系が亢進してくる結果、全体として神経が高ぶり、それが強い不眠となります。

 

精神科の治療でも神経の高ぶりや不眠対策が最初に必要な必須のテーマです。

初めに不眠が改善すれば、脳の働きもよくなり、理性がうまく使えるので、多くの精神症状の改善に役立ちます。

 

良眠の方は十分幸せですから、それに満足し、不眠の問題に関して、あまり、不眠で苦しむ人を追い詰めないようにしてください。

 

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